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子供の表情認識能力に関する最新研究― 感情認識能力はどのように発達するのか ―

更新日:1月28日

本日は、子どもたちの感情認識能力と非言語コミュニケーションの発達に関する研究をご紹介します。


この研究は、「年齢や性別が、他者の感情表現の理解にどのような影響を与えるのか」という点に焦点を当て、日常生活や人間関係の基盤となる重要なスキルを検討しています。


子育て中の保護者の方や、教育・支援に関わる方にとって、子どもの“感じ方の発達段階”を理解する手がかりとなる内容になれば幸いです。




研究の概要


本研究は、Romani-Sponchiado et al.(2022)“Emotional Face Expressions Recognition in Childhood: Developmental Markers, Age and Sex Effects”

として発表されました。


対象は、6歳から11歳までの子どもです。


研究の目的は、子どもたちが 他者の顔の表情から感情をどの程度正確に読み取れるか、そしてその能力が 年齢や性別によってどのように変化するか を明らかにすることでした。


実験方法のポイント


子どもたちは、


  • 喜び

  • 怒り

  • 悲しみ

  • 嫌悪

  • 恐怖

  • 驚き


という 6つの基本感情 を表した顔写真を見て、それぞれの感情を識別する課題に取り組みました。


さらに研究では、


  • 感情の強度(低・中・高)

  • 写真の提示時間(500ms/1000ms)


を操作し、それらが認識の正確さにどのように影響するかも検討されています。


主な研究結果


① 年齢とともに感情認識能力は向上する

年齢が上がるにつれて、感情を正確に認識する能力は 明確に向上することが示されました。

特に、


  • 10〜11歳の子ども

  • 6〜7歳の子どもよりも


すべての感情において高い認識精度を示しました。


これは、認知機能の発達や脳の成熟が、表情情報の処理能力を高めていくことを示唆しています。



② 認識しやすい感情・難しい感情がある

感情ごとの認識のしやすさには差がありました。

  • 最も認識しやすい:喜び

  • 比較的認識しやすい:嫌悪・驚き

  • 認識が難しい:悲しみ・恐怖


特に、恐怖と驚きは表情構造が似ているため、混同されやすいという傾向が確認されています。

これは大人でも見られる現象であり、子どもにとってはなおさら区別が難しい感情であると考えられます。



③ 感情の「強度」は認識精度に大きく影響する

感情表現の強度が高いほど、子どもたちはより正確に感情を識別できました。


一方で、強度が低い(微妙な表情)場合→ 感情の特定が難しくなり、誤認識が増えるという傾向が見られました。


これは、感情認識が「白黒はっきりしたもの」から「微妙なニュアンス」へと段階的に発達していくことを示しています。



④ 性別による違いは明確ではなかった


従来の研究では、「女性の方が感情認識に優れる」とされることもありました。

しかし本研究では、性別による有意な差は確認されませんでした。


研究者はその理由として、


  • 年齢層

  • 課題の種類

  • サンプルサイズ

  • 脳の成熟段階の個人差


などが影響している可能性を指摘しており、この点については さらなる研究が必要としています。



⑤ 表情の提示時間の影響は限定的

写真の表示時間(500ms/1000ms)については、全体的な感情認識精度に大きな差は見られませんでした。

ただし、怒りの表情については表示時間が長い方が、より正確に認識される傾向が確認されています。

これは、怒りの表情が より多くの顔部位情報の統合を必要とする感情である可能性を示唆しています。



実生活への示唆


この研究は、子どもたちの感情認識能力が 自然に一気に身につくものではなく、発達と経験の積み重ねによって育っていく能力である ことを示しています。


つまり、


  • 「空気を読むのが苦手」

  • 「表情を読み違える」


といった行動は、発達段階として自然なことである場合も少なくありません。



大人にできるサポートとは


子どもたちの感情理解を支えるために、大人ができることは、


  • 感情が表れた表情を見る機会を増やす

  • 表情と感情を言葉で結びつけて伝える

  • 「どう感じていると思う?」と一緒に考える


といった、経験の質を豊かにする関わりです。


非言語コミュニケーション能力は、学力と同じように、育ち・支えられていくスキルだと言えるでしょう。


本研究は、


  • 感情認識能力は年齢とともに発達する

  • 感情によって難易度が異なる

  • 微妙な感情理解は特に経験を要する


という重要な知見を示しています。



子どもたちが他者の感情を理解し、より良い人間関係を築いていくためには、「正しく読み取れるようにさせる」よりも「発達の途中であることを理解する」ことが大切なのかもしれません。



参考文献

Romani-Sponchiado, A., Maia, C. P., Torres, C. N., Tavares, I., & Arteche, A. X. (2022).Emotional Face Expressions Recognition in Childhood: Developmental Markers, Age and Sex Effects.Cognitive Processing, 23, 467–477.







 
 
 

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