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Zen Presence(禅的プレゼンス)


2024年9月に開催された第76回エミー賞において、ハリウッド制作のドラマ『SHOGUN 将軍』は作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞などを含む計18部門での受賞という歴史的快挙を達成しました。さらに、2025年1月の第82回ゴールデン・グローブ賞でも、テレビドラマ部門の作品賞をはじめ、主要な男女主演賞・助演賞をすべて制覇し、日本発の表現が世界の舞台で圧倒的な評価を受けたことを示しています。


その中心に立ったのが、主演・プロデューサーを務めた真田広之さんです。彼が演じた“静かなる将軍”の姿は、声を荒げず、最小限の動きで最大の存在感を放つという「Zen Presence(禅的プレゼンス)」そのものであり、今やグローバルビジネスにおいても見直されるべき非言語の影響力を体現していたように見えます。




『SHOGUN 将軍』において真田さんが演じたのは、「吉井虎永」という架空の武将ですが、その人物像は明らかに徳川家康をモデルとしています。虎永は多くを語らず、感情をあらわにすることもなく、静かな佇まいと所作の美しさによって周囲を従わせていきます。視線、沈黙、一歩の歩み。どれもが計算され尽くし、無駄を削ぎ落とした所作には、まさに「禅の身体観」が息づいていました。その“語らずして語る”表現が、世界中の視聴者に深く響きました。




日本文化において「間(ま)」は、ただの沈黙や時間の空白ではありません。それは、相手に思考の余地を与える意味を含んだ沈黙であり、空間の呼吸を整える時間でもあります。茶道や能楽、剣術においても、「動きの前後の間」が最も重要とされてきました。剣を抜く直前の静止が、観客の緊張感を高める。あるいは、言葉を投げかける前の沈黙が、相手に自問を促す。真田さんが演じた虎永のすべての所作には、この「間」が丁寧に織り込まれていました。それは演技でありながら、武士道が体現する“戦わずして勝つ”戦略そのものでもあったのです。



国際ボディランゲージ協会がエグゼクティブの方々に指導している「Zen Presence(禅的プレゼンス)」とは、無駄を削ぎ落とした所作、余白を活かす会話、沈黙による説得力などを組み合わせた、非言語の影響力を最大化する戦略的スタイルです。そしてこの静けさの技術は、実際のビジネスリーダーたちの間でも高く評価され始めています。


たとえば、Googleで開発されたマインドフルネス研修「Search Inside Yourself」では、「反応よりも観察」「即答よりも一呼吸」が中心概念として取り入れられています。また、世界の企業で行われているエグゼクティブ・プレゼンス研修では、「声量」や「派手なアピール」よりも、「沈黙に耐えうる落ち着き」がリーダーの条件とされています。現代のグローバル環境では、文化や価値観が多様化しているからこそ、言葉(メッセージ)だけでははなく“空気を読む・作る”能力も、共感と信頼を得るうえで不可欠となっているのです。


今回は、誰でも簡単に実践できるZen Presence技術を5つをご紹介したいと思います。


1. 発言前に間を取る

→ 話し始める前に3秒の沈黙を置くことで、場の空気が変わります。即答は知識、間は信念を感じさせます。


2. 無駄なジェスチャーを抑える

→ 手振りや表情に頼らず、身体の重心を安定させて語ることで、メッセージに重みが加わります。


3. 相手の発言後に反応しない沈黙を保つ

→ すぐに答えず「受け止める時間」を作ることで、信頼感が生まれます。虎永の“聞く姿勢”はその好例です。


4. 視線を「送る」のではなく「据える」

→ 攻撃的でないまなざしが、相手に「見守られている」と感じさせます。これが上質な関係構築を促します。


5. 背筋を通した“静止の立ち姿”を身につける

→ ビジネスの場面では、ただ立っているだけで信頼感を与えることが可能です。虎永の登場シーンはその象徴でした。

静けさは、日本だけの特権ではありません。西洋にも“Pause Power”や“Executive Stillness”といった概念が存在し、多くのリーダーが「話す前に考える力」「語らないことで伝える力」を実践しています。しかし日本では、そうした静けさの力が礼儀作法や立ち居振る舞いといった日常の動作にまで溶け込み、身体を通じて自然に伝わる形で受け継がれてきたのです。。それが「禅」であり、「武士道」でありドラマの中で体現されていた「静けさの美学」なのです。


言葉の少なさで信頼を勝ち取り、所作の丁寧さで場を動かし、静けさの中に力を込める。このZen Presenceは、いまや国籍を超えて、すべてのリーダーが身につけるべき静けさの戦略となりつつあります。


わたしたちにも、今日からできることはあります。話す前に呼吸を整える。姿勢を整える。動かずに場に存在する。

みなさんの身体の中に、虎永のような“静かな将軍”が眠っているかもしれませんね。

 
 
 

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