親の無表情が子供の心に与える影響



みなさん、こんにちは。国際ボディランゲージ協会代表の安積です。


親が無表情のままで子供と向き合うと、子供のメンタル面にはどのような影響があると思いますか?


幼児研究の第一人者であるハーバード大学のエドワード・トロニック氏が、母親の無表情が子供の精神面に及ぼす影響について研究していますので、今回はその研究のなかで行われた実験の1つをご紹介したいと思います。





エドワード・トロニック氏が行なった実験では、はじめに母親と乳児が共に触れ合いながら楽しく過ごしてもらいます。母親は赤ちゃんが何かを指差すと、その方向を一緒に見て微笑んだりして、ポジティブな感情を共有します。


しかし遊びの最中に、にこやかだった母親の表情が突然、無表情へと変わります。

このとき、母親の変化を見た乳児の心には、どのような感情プロセスが生じるのでしょうか?



無表情の母親の姿を見て、赤ちゃんはすぐに異変に気づきます。赤ちゃんは母親に以前の状態に戻ってもらうために、笑顔を見せたり、指さしで母親の注意を引こうとしたりします。


それでも母親が無表情のままだと、今度は自分の両手を母親の顔の方に近づけたり、手を叩いて音を出したり、高い声を上げて、何とか母親に元の状態へと戻ってもらうために働きかけます。


微笑む、手を叩く、手を差し出すといったボディランゲージを通して母親に働きかけても、母親の態度は変わりません。自分のアクションに対してまったく反応を見せない母親を見て、乳児の表情は途端に曇り、しまいには母親から顔を背けて泣き出します。


母親の子供に対する無表情の時間はわずか2分という短い時間にも関わらず、赤ちゃんと母親との間には心の壁が生まれたことがわかります。親と子のコミュニケーションのなかでこの状態が長く続くと、子供は次第に人を信頼できない人間へと成長し、不安感をもちながら心を閉ざして社会の中で生きるようになってしまうとトロニック博士は指摘します。




次の映像は父親と乳児との間で行われた無表情の実験です。母親の時と同じような反応が見られますね。




私は学生時代にインドの孤児院で、孤児たちの世話をするボランティアをしていたことがあります。施設内のシスターたちは「たとえ安全な食事と睡眠の場を与えていても、十分な愛情を与えてもらえない孤児たちは、メンタル面だけでなく身体面においても正常には育たなくなる」という話をよくしてくれました。


毎朝、施設の扉が開かれ孤児たちと対面すると、施設内の乳幼児たちは一斉にハイハイや駆け足でわたしたちボランティアの方へかけより、両手をいっぱいに広げて抱っこをせがんできます。抱っこをして目線を同じ高さにしてあげると、今度はわたしたちの顔に少しでも長く触れていようと、小さな手を顔に伸ばしてきたことを思い出します。情緒的なつながりを作るためにボディタッチは欠かせませんが、表情を通しての感情のやりとりこそが、子供に愛情を感じてもらったり情緒を豊かにしてもらう上で、とりわけ大切な役割を果たすことを幾度も実感しました。



仕事や育児の疲れからぐったりしていると、スイッチが切れたかのように表情が顔から消えてしまうことがあります。頭ではポジティブな笑顔を見せることが大切かを理解していても、心が塞いでいるときには、たとえ可愛い我が子の前でも表情を作ることさえ難しいときもあるでしょう。


しかしこれらの実験からもわかる通り、相手がまだ幼い乳児であっても、コミュニケーションは常に相互的に行われますから、子供の情緒面での発育や心理的安全性を守るためには、表情を通した瞬間的なレスポンスは欠かせないのです。


親の仕事や責任というのは本当に重くて大変なものですが、子供が生まれた瞬間から、親は自身の表情においても重要な責任を負いつづけていることを、自覚しなくてはならないでしょう。


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