コミュニケーション障害の人は怒りへの反応が苦手?

花畑のなかでひっそりと潜んだ蛇の存在と、多くの蛇のなかに紛れ込んだ一つの花の存在。皆さんなら、どちらを早く見つけ出すことができるでしょうか?


私たちの脳は、危険がふりかかる状況に身を置いた際に、その危険にいち早く気づける生存本能がプログラミングされています。


ところがコミュニケーション障害の特徴を持つ人々は、危険な状況に身を置いても、気づきに時間を要することが京都大学の研究からわかったのです。



その*研究内容をご紹介しましょう。


そのの子供達を、コミュニケーションに問題を抱えている子供達と問題を抱えていない子供達の2つのグループにわけて、〈笑顔〉と〈怒り〉の表*情を見分けるテストを行いました。


コミュニケーションに問題を抱えていない子供達は、〈怒り〉の表情を〈笑顔〉の表情よりも早く見つけるという結果がでました。一方で、コミュニケーション障害の問題を抱える子供達は、〈怒り〉の表情を見つけ出すスピードも〈笑顔〉を見つけ出すスピードもほぼ同じという結果がでました。つまり、コミュニーションに問題のない子供達に比べると、怒りの表情に気づくのが遅れるということです。


この実験結果は、大人たちを対象に行っても同様でした。コミュニケーション障害の問題を抱える大人たちの〈怒り〉の表情を見つけ出すスピードは、コミュニケーションに問題を抱えていない人達よりも遅いという結果がでたのです。





コミュニケーション障害を抱えている人は、他人の考えや気持ちを想像し、先の見通しをたてた上で、周りとうまくやっていけるように振舞うことが苦手です。


さきほどの実験結果でも現れたように、怒りの表情を見極めるのに時間がかかる人は、周囲の人間が自分の行動に対してネガティブな印象を抱いていたとしても、その事実を察知することが苦手。そのために、場違いな言動をとってしまうことも少なくはありません。






しかし逆の見方をすれば、怒りの表情の読み取りが苦手な人は、周囲の人の感情や表情に影響されることなく、自分が重要だと考える意見やアイデアを率直に伝えられる人だとも言えます。


周りの人々がなかなか指摘できなかった問題点を単刀直入に指摘してくれたり、忌憚のない意見から、新たな気づきが生まれることもあるかもしれません。





私たちは、場の空気や気持ちをうまく汲み取ってくれない人たちと対峙すると、不満やストレスを感じてしまうこともあります。しかし、個々の脳にはそれぞれ違いがあり、その違いは優劣ではなく個性として捉えると、もっとも互いの違いを受容しやすくなるはずです。


いま、アメリカのシリコンバレーなどでは、自閉症やADHDなど神経疾患やコミュニケーション障害を抱える人々も積極的に採用する動きが始まっています。*ニューロ・ダイバーシティーという考え方が広がると同時に、いろいろな個性をもつ人材を生かす環境づくりが徐々に進められています。


感情や状況の捉え方や理解の仕方に違いがあるからこそ生まれるメリット、コミュニケーションの多様性が生み出す価値の方へ、もっと目を向けられるようにもなりたいですね。



*Tomoko Isomura, Hiroyasu Ito, Shino Ogawa & Nobuo Masataka

"Absence of Predispositional Attentional Sensitivity to Angry Faces in Children with Autism Spectrum Disorders"

Scientific Reports 4, Article number: 7525 Published 18 December 2014



*ニューロダイバーシティ(neurodiversity)とは、「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方を指す言葉です。




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